
上映期間
9月12日(金)~9月25日(木)
監督
マーク・フレッチャー
出演
パトリック・ダイクストラ、ドローレス(クジラ)、キャンオープナー&赤ちゃんホープ(クジラ)
上映時間
72分
本作は、目にする機会の少ないクジラの知られざる生態をカメラに収め、パトリックとクジラたちとの心温まる交流を映し出しています。
パトリックという人物への違和感と共感
ウォール街で弁護士として活躍していたパトリック・ダイクストラ氏は、その後水中カメラマンへと転身しました。BBCの海洋ドキュメンタリー「ブルー・プラネットII」で撮影を担当したエピソードでは、英国アカデミー賞を受賞するという輝かしい経歴を持っています。少年時代、博物館で見たシロナガスクジラのレプリカに衝撃を受け、クジラに魅了された彼は、水中カメラマンとして世界中を旅しながら、20年もの間クジラを追い続けてきました。
2019年のある日、パトリック氏はドミニカ共和国沖の大海原で、一頭のメスのマッコウクジラと偶然出会います。
そのクジラはパトリック氏に興味を示し、まるでコミュニケーションを取ろうとしているかのようでした。
パトリック氏はそのクジラに「ドローレス」と名付け、彼女がクジラの知られざる生態を教えてくれると信じ、再び彼女を探し始めるのでした。
映画の概要と第一印象
冒頭でお金持ち生まれたわけではないから弁護士として働くことは地獄だった、まるで監獄にでもいるような思いだった、って言葉には、さすがにおっちゃん何いってんだよ、中には必死に勉強して入ってくるというのに、地獄のようだったとは言い過ぎだろ!
この言葉、どう受け止めるべきなのだろうか?
私だけがそう感じたのだろうか?
しかし、この人には生き方が不器用な一面もあるように思えます。
そのような状況の中で、マッコウクジラがコミュニケーションを取ってくれるので、とても楽しいだろうなと感じてしまいました。
そして、マッコウクジラの大きな目に、まぶたを閉じる様子があったので、スクリーンに映し出された時は「わぁ!」と思ってしまいました。
海中に直立したクジラの群れの映像も印象的でした。
若い雄のクジラは絆が強く、一頭が座礁すると、他の雄たちも次々と座礁してしまうなど、まだ解明されていない生態が多くあります。
彼らは仲間を助けようとして集まるのであり、逃げているわけではありません。
そのため、集団で捕獲されてしまうのだと言われています。
最後に映し出された、逆さまになったクジラの映像は、まるで幻想的で大変素晴らしかったです。
このドキュメンタリーは、水中カメラマンのパトリックと、2頭のマッコウクジラ(ドローレスとキャンオープナー)との交流を描いています。
様々な種類のクジラの映像を楽しめるかと思っていましたが、基本的にはパトリックが追っているマッコウクジラのみでした。
シロナガスクジラを目的としていたはずが、いつの間にかマッコウクジラがメインのお話になっていました。
そして、『白鯨』を読み返したくなりました。
「こんなにも素晴らしい自然を大切にしましょう」
「私たち人間も同じ地球の仲間なのですから、かけがえのない地球を守りましょう」
といったメッセージには、どうも嘘っぽさを感じてしまいます。
そして、この映像を見て感動している自分の感情の置き所が、よく分からない部分もあります。
二木愛さんとの記憶のリンク
- マッコウクジラと泳いだことで知られる日本女性は、水族表現家の二木愛さんです。彼女はフリーダイビングで世界中の海を撮影しており、特にマッコウクジラの子どもとの忘れられない体験について語っており、素潜りのギネス世界記録も樹立しています。
- 水族表現家として:
二木さんは、フリーダイビング(素潜り)で水中を撮影し、海の魅力を伝える活動をしています。 - マッコウクジラとの出会い:
海の世界に興味を持ったきっかけの一つとして、マッコウクジラとの出会いを挙げており、その経験は彼女の活動に大きな影響を与えています。 - ギネス世界記録:
フリーダイビングでギネス世界記録を樹立した経験もあり、その背景にはマッコウクジラとの関わりも示唆されています。
二木愛さんは、数年前までBSでよくドキュメンタリー番組に出てましたよね。
今回の映画を機にどうしているのかなと思い、ふと調べてみました。
二木愛さんの話 -まさに“海の詩人”のような存在ですよね。
彼女が出演していたNHKのドキュメンタリー『プレシャス・ブルー』シリーズでは、素潜りでマッコウクジラの親子に接近し、呼吸音や泡を出さない撮影スタイルで、クジラの自然な姿を捉えていました。
ドミニカ国の海での撮影では、クジラとの距離感や信頼関係が映像からも伝わってきて、まるで“言葉を超えた対話”のようでした。
二木愛さんがマッコウクジラと交流する姿が印象的だったNHKのドキュメンタリーは、2014年に放送された『プレシャス・ブルー カリブ海・クジラの親子と出会う旅』という作品です。
ただ、彼女の活動はそれ以前から注目されていて、2005年頃にもBSなどで取り上げられていた可能性は十分あります。
あの頃の映像って、今見返すと“海との対話”の原点みたいで、じんわり来ますよね。
クジラの分類と天敵について
マッコウクジラの「マッコウ」は、その腸内で生成される貴重な香料である龍涎香(りゅうぜんこう)の香りがお香の抹香(まっこ)と似ていることに由来します。
中国名の「抹香鯨(まっこくげい)」が日本に伝わり、「マッコウクジラ」と定着したとされています。
マッコウクジラの主な天敵はシャチです。
マッコウクジラは深海で獲物を捕食するため、深海に追ってこられないシャチには捕食されにくいですが、シャチはマッコウクジラの子供を狩ることがあります。
また、ゴンドウクジラやオキゴンドウもマッコウクジラを襲うことがあります。
イカを主食とし、頭部にはダイオウイカにつけられた白いきずや吸盤のあとが見られます。
1200メートルの深海までもぐった記録があります。
寿命は最高70年。
新生児でも体長2メートルもあります。
マッコウクジラの標準的なオスの体長は約16 - 18メートルであり、メスの約12 - 14メートルと比べて30 - 50%も大きいんです。
成長したオスには体長が20メートルを超えるものもいます。
24メートル以上という記録も複数存在しています。
また、年老いたマッコウクジラは真っ白くなっていくそうです。
マッコウクジラって、超音波で仲間とコミュニケーションを取るだけでなく、人間に対しても好奇心を持って接近してくることがあるんですよね。
「人間との交流性」、それはきっと、クジラ側にも“何かを伝えたい”という意思があるように見えるからかもしれません。
クジラ(哺乳類)とジンベイザメ(魚類)を比べると、クジラの方がはるかに大きいです。
特に、地球最大の動物であるシロナガスクジラは、体長が約30mに達し、ジンベイザメの最大体長(約20m)よりも大きくなります。
その他鯨類の傾向
ゴンドウクジラとシャチはどちらもマイルカ科に属しますが、シャチはゴンドウクジラよりも大型で、ハクジラ類の中でも特に強力な捕食者です。
シャチは「キラーホエール(Killer Whale)」の英名が示す通り、他のクジラやイルカを捕食することもあります。
ゴンドウクジラ属はシャチに属する「フィロソフィ(ゴンドウクジラ属)」とは別の属に分類されますが、オキゴンドウのようにシャチの近縁とされる種も存在します。
オキゴンドウ:
シャチに次いで大きいとされる種であり、外見もシャチに似ていることから「シャチモドキ」とも呼ばれます。
体長は6m、体重は1,500kgほどに達する。
寿命は60年ほどである。
身体は細長く、30cm以上の長い背びれを持つ。
ヒレナガゴンドウとコビレゴンドウ:
ゴンドウクジラ属に属する種ですが、シャチに襲われるとシャチの群れを追い払うモビングを行うこともあります。
このように、ゴンドウクジラとシャチは同じマイルカ科に属しながら、シャチはさらに上位の捕食者としてゴンドウクジラを襲うことがある、という関係性を持っています。
その形態からハクジラとヒゲクジラに大別され、ハクジラのうち比較的小型(成体の体長が5 m前後以下)の種をイルカと呼び区別することが多い。
鯨類をイルカとクジラに大別するのは人為分類であり、これらは単系統群ではない。
映像の余韻と自分の感情の置き場
パトリックは、クジラの生態について詳しく知りたい、そして何か力になれるのではないかという思いから、クジラにカメラを取り付けることにしました。
多くの仲間ができた中で、一番安心できる存在がドローレスかキャンオープナーのどちらかと感じていました。ドローレスが一番親しい存在でしたが、年頃になり難しい状況になったため、キャンオープナーがその役目を担うことになりました。
一度目は、運良くカメラを取り付けることができました。
そして回収もできましたが、その後なかなかキャンオープナーに会うことができませんでした。
そのような状況で会えたにも関わらず、もしかしたら怒っているのではないかと、パトリックは自身の感覚として感じ取ったようです。
最後に出会えた時も、もしかしたらまだ怒っているのではないか、真っすぐ進んできて今までとは違う雰囲気だと感じた瞬間に、潜り始めました。
深海へと向かうのですが、その背後にはキャンオープナーの子供がいて、見ていてくれと言うかのように…
きっと許してくれたのだと思えるところが、何か健気だと感じました。
この映画はドキュメンタリー作品なので、観る人によって意見が大きく分かれますね。
退屈だと感じた人からは、あまりにも面白みに欠けるという意見もあります。
一方で、様々な種類の鯨が登場することや、雄大な自然の描写が素晴らしいといった肯定的な感想も多く寄せられています。
そのため、ドキュメンタリー作品は、必ずしも全ての人にとって満足のいくものとは限らないのかもしれません。
私自身としましては、鯨が好きということもあり、このような自然を題材にしたドキュメンタリーは好んで見ています。
また、久しぶりに二木愛さんのことを思い出し、やはりマッコウクジラは良いものだな、と感じています。
クジラの目に映る私たちは、どんな存在なのだろう。
そんな問いが、今も静かに海の底で響いている気がします。