「マイスモールランド」を鑑賞して思ったこと

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日時: 令和7年9月17日(水曜日)午前10時15分~午後0時15分

上映作品: 「マイスモールランド」(2022年/日本・フランス合作)

作品について

在日クルド人の少女が、在留資格を失ったことをきっかけに、自身の居場所について葛藤する姿を描いた社会派ドラマです。

是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」の若手監督、川和田恵真さんの商業映画デビュー作で、2022年第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを受賞しています。

主人公は、幼い頃から日本で育った17歳のクルド人少女サーリャです。

埼玉県の高校に通い、同世代の日本人と変わらない生活を送っていましたが、家族の難民申請が不認定となったことで在留資格を失い、それまでの日常が一変します。

5カ国のマルチルーツを持つモデルの嵐莉菜さんが映画初出演にして初主演を務めています。

映画を観て印象的だったこと

この作品で特に好感を持てたのは、主人公のクルド人女子高生が、クラスメイトたちと違和感なく溶け込み、みんなと仲良くしている姿でした。

若い世代においては、外国人に対する意識が以前とは変わってきているのかもしれません。

時代の進歩を感じられる部分でした。

一方で、出入国在留管理庁の職員による淡々とした説明には、毎回疎外感を覚えます。

制度的な対応の冷たさと、現場での人間的な温かさとの対比が印象に残りました。

日本の難民認定制度の現状

クルド人を取り巻く状況

令和6年末時点で、埼玉県川口市には2,206人のトルコ国籍者が在住しており、そのうち約75%が難民申請者とみられています。

多くが難民申請を繰り返しながら仮放免の状況で生活しているのが現状です。

認定率の低さの背景

日本の難民認定率が極めて低い理由として、以下の点が挙げられます。

制度上の問題

  • 迫害の定義が生命と身体の自由への危険に限定される傾向
  • 迫害を証明する客観的証拠の提出が求められる
  • 審査期間の長期化と生活支援の不足

構造的な問題

  • 入国管理庁が「管理・取り締まり」を主目的とし、「保護・支援」の視点が弱い
  • 適切な通訳や日本語対応の不足
  • 不認定理由の説明不足

迫害から逃れてきた難民が、本国での迫害を証明する客観的証拠を揃えることは現実的に困難です。

このような入手困難な要求をすることで認定率を低く抑えているとすれば、制度的な問題があると言わざるを得ません。

日本人の外国人受け入れに対する意識

長年感じていることですが、日本人は同胞に対してよりも、外国人に対してより厳しい態度を取る傾向があるように思われます。

これは歴史的にも見られる特徴で、例えば戦後の中国残留孤児の問題もその一例です。

戦後、ある番組を通して多くの戦争孤児が日本に戻ってきましたが、その体験は壮絶なものでした。

故郷に帰ってきたにも関わらず、社会に受け入れられず、一部は反社会的な道に進まざるを得なかった人もいたと聞きます。

中国マフィアの最大勢力の一部が、そうした背景を持つという話もあります。

こうした歴史を踏まえると、現在のクルド人やミャンマー人に対する対応にも、同様の構造的な問題が存在するように感じられます。

国際的な文脈での考察

以前は各国から日本の難民政策への批判がありましたが、現在は世界的に分断が進んでいます。

どの国でも「治安の悪化」や「雇用への影響」を懸念する声があり、この傾向は近年より顕著になっているようです。

ドイツの例を見ると、ヒトラー時代の教訓から難民受け入れには比較的積極的ですが、それでも世代間で考え方に差があり、完全な解決策があるわけではありません。

終わりに

この映画を通じて、在日外国人の置かれた現実について改めて考えさせられました。

若い世代の意識変化には希望を感じる一方で、制度的・構造的な問題は依然として存在します。

不法入国者は、その国から逃げ出さざるを得なかった人たちであり、それなりの理由があるはずです。

クルド人、ミャンマー人、ウクライナ人など、それぞれが困難な状況に置かれている現実を、もう少し人道的な視点で捉えることができれば、と思います。

ただし、これらは個人的な印象や憶測に基づく部分も多く、より詳細な検証が必要な問題でもあります。