障害者職場体験の無給制度について \- 体験に基づく問題提起

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はじめに

2025年1月、私は障害者就労継続支援A型事業所での職場体験を行いました。

その際に経験した問題について、同じような状況に置かれる方が今後現れないよう、改善を求める意味で記録に残したいと思います。

職場体験の概要

2024年12月にハローワークを通じて手配し、清掃事業を行うA型事業所で3日間の職場体験を実施しました。

業務内容は、レーンに流れてくる廃棄物の仕分け(缶、ペットボトル、瓶など)で、朝9時半から16時までの勤務でした。

なお、職場見学時には「もう少し長時間の勤務も可能」との説明を受けていましたが、体験最終日に改めて確認したところ、強い口調で「それは無理」と断られました。

この一貫性のない説明も、不信感を抱く要因となりました。

問題となった点:事前に無給であることの説明は一切ありませんでした。

一般企業での勤務経験しかない私にとって、これは想定外のことでした。

結果的に、私が無給について問い合わせをした後に交通費3,000円のみが支給されましたが、労働に対する対価は支払われませんでした。

制度上の位置づけと問題点

国の見解

現在の制度では、職場体験は以下のように位置づけられています:

  • 雇用契約なし:「労働」ではなく「体験・実習」として扱われる
  • 相互理解が目的:障害者と企業双方の理解を深める制度
  • 無給が原則:雇用契約がないため賃金は発生しない

労働基準法との矛盾

しかし、労働基準法では「実際に指揮命令下で業務を行い、企業に利益をもたらしている場合は労働者とみなす」と定められています。

今回の体験では:

  • 明確な業務指示があった
  • 企業の利益に直結する作業を行った
  • 拒否できない状況での労働だった

これらの状況は、法的には「労働」に該当する可能性があります。

制度の曖昧さという根本問題

最も問題なのは、国が明確な基準を示さず、判断を現場に委ねていることです。

「指針は示したので、あとは各自で適切に判断してください」という姿勢により、以下の問題が生じています:

  • 事業所ごとに異なる運用
  • 事前説明の不備
  • 労働者の権利意識の低下

相談機関での対応

この問題について、高崎市障害者支援SOSセンターに相談しました。

しかし、「国が容認していることなので、私たちには関係ない」という趣旨の回答をいただき、建設的な解決策は得られませんでした。

このような対応は、相談者の疑問や不安に真摯に向き合う姿勢とは言い難く、改善が必要だと感じます。

海外の状況との比較

アメリカ

働く能力がある人に対しては、障害の有無に関係なく同等に扱われます。

「障害者雇用」という特別な枠組みよりも、個人の能力と適性に基づく雇用が重視されています。

デンマーク

フレックス・ジョブ制度:障害者がパートタイムで働いても、フルタイム相当の給与を受け取れる制度があります。

企業が支払う分と自治体が補填する分により、労働に見合った適正な報酬が保障されています。

根本的な考え方の違い

  • 日本:「支援が必要な人」として捉えがち
  • 海外:「様々な特徴を持った人の一人」として捉える

改善提案

  1. 事前説明の義務化:職場体験前に、報酬の有無を明確に説明する
  2. 労働の定義の明確化:「体験」と「労働」の境界線を具体的に示す
  3. 最低限の報酬制度:短時間でも実質的な労働に対しては適正な対価を支払う
  4. 相談機関の対応改善:問題提起を受け止め、建設的な解決策を検討する体制作り

おわりに

職場体験といえども、実質的に労働を行う以上、それに見合った扱いを受けるのは当然のことです。

制度の曖昧さを利用した無給労働は、障害者の働く意欲や尊厳を損なう可能性があります。

真の共生社会を目指すなら、障害者も一人の労働者として適正に処遇される制度作りが必要です。

この問題提起により、同様の状況に置かれる方が少しでも減ることを願っています。


本記事は実体験に基づく問題提起であり、制度改善を求める目的で作成しました。