『フロントライン』鑑賞記

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監督関根光才
出演小栗旬松坂桃李池松壮亮/森七菜/桜井ユキ美村里江吹越満光石研滝藤賢一窪塚洋介 ほか

公式サイトhttps://wwws.warnerbros.co.jp/frontline

>あらすじ

2020年2月、横浜港に寄港した豪華客船で新型コロナウイルスが猛威を振るった。乗客乗員3,711名を乗せた船内で感染が拡大し、100名以上が発症しました。

政府の要請で災害派遣医療チーム「DMAT」が出動し、DMAT統括の結城英晴(小栗旬厚生労働省の立松信貴(松坂桃李が対策本部で指揮を執ります。船内では医師・仙道行義(窪塚洋介DMAT隊員・真田春人(池松壮亮らが未知のウイルスと闘いました。

パンデミックの最前線で奮闘した彼らの、事実に基づく献身と勇気の物語。


2025年6月14日、109シネマズ高崎で『フロントライン』を鑑賞しました。この劇場は8月に閉館予定のため、残り少ない機会を大切にしたいという気持ちもありました。

この日は朝から慌ただしいスケジュールで、『群馬クラフトマーケット』の渋滞に巻き込まれ、映画館に滑り込みました。

あの出来事を改めて見つめ直す

映画を観ながら、当時の記憶がよみがえってきました。

あの頃、私たちは「これまでのように抑え込めるはず」と楽観視していた部分もあったのではないでしょうか。SARSやMERSが日本で広がらなかった経験が、その油断の背景にあったかもしれません。

しかし新型コロナウイルスは状況が全く違いました。変異を繰り返しながら感染力を増し、世界中に広がり、多くの命を奪いました。

医療現場は混乱し、医師や看護師たちは防護服に身を包み、自らも感染リスクに晒されながら必死に対応していました。映画では、そのリアルな姿が丁寧に描かれています。

ワクチンへの不安と向き合った日々

私は持病(高血圧)の関係でワクチン接種を見送りましたが、当時多くの人が「接種すべきか否か」で葛藤していたと思います。短期間で開発・承認されたワクチンに対し、安全性への不安を感じていた方も少なくありませんでした。

2021年8月8日時点で、ファイザー社およびモデルナ社のワクチン接種後に死亡が確認された方は
1,002人

接種との因果関係は認められていないものの、この数字は大きな不安を呼び起こしました。野球選手や力士、将来有望だった看護師さんなど、様々な分野で活躍されていた方々が亡くなられたことも記憶に残っています。

政府や官僚の発表にはどこか曖昧さを感じ、情報を信じていいのか迷う場面も多くありました。ワクチンについて悩みながら接種を受けた方も多く、そして残念ながら命を落とされた方もいらっしゃいます。犠牲になったすべての方々に、深い哀悼の意を表したいと思います。

当時の報道のあり方についても、今振り返ると疑問に感じる部分が多くあったように思います。

最前線の医療従事者と、マスコミの在り方

映画では、医療従事者の献身的な姿が際立っています。家族と離れ、命を危険にさらしながら患者に向き合う覚悟と行動には頭が下がります。

一方、マスコミの描かれ方には考えさせられるものがありました。映像を求めて突き進む姿、騒ぎ立てる世間、SNSでの誹謗中傷。現場の混乱を助長した部分がなかったとは言えないでしょう。

ある看護師が映像に映ったことで差別や偏見の対象となった場面は、観ていて胸が痛みました。

印象的だったのは、マスコミを演じた人物がSNSマスゴミという言葉を目にする場面でした。

あのとき、私たちは冷静だったと言えるでしょうか。改めて振り返ることで、今だからこそ気づけることもあるように思います。

役者陣の印象

森七菜さんの走る姿がとても印象的でした。先日観た『国宝』にも出演されており、今注目の女優さんだと実感しました。クルーズ船スタッフとして船内を駆け回る姿が目に焼き付きました。

窪塚洋介さんの演技も素晴らしく、久しぶりに拝見しましたが深みのある役柄で説得力を感じました。池松壮亮さんも、静かな中に強さを感じさせる演技で印象に残りました。

最後に

この映画は、あの出来事を「なかったこと」にしないために作られたのだと思います。亡くなった方々の存在を記録し、戦った医療従事者の姿を残す。それは私たち一人ひとりが心に刻んでおくべき事実です。

まだこの映画を観るのが辛いと感じる方もいるかもしれません。特に、大切な方を亡くされた方にとっては心の傷を呼び起こす内容かもしれません。

けれど、いつか時間が経ったときに改めてこの作品を観ることで、何か新しい視点が得られるかもしれません。

この映画を観て、あなたはマスコミのあり方をどう思われるでしょうか。

そして、最前線で闘った医療従事者の姿に、何を感じられるでしょうか。