映画鑑賞記『岸辺露伴は動かない 懺悔室』

監督:渡辺一貴 出演:高橋一生/飯豊まりえ/井浦新玉城ティナ/戸次重幸/大東駿介 ほか 公式サイト:岸辺露伴は動かない | 映画公式 劇場:109シネマズ高崎 上映時間:13:25~15:50(舞台挨拶中継付き)

レオナルドAI

5月24日。今日は少し涼しい一日でした。109シネマズ高崎にて『岸辺露伴は動かない 懺悔室』を鑑賞しました。
今回の鑑賞には、特別な思いがありました。8月にこの映画館が閉館を迎えると知っていたからです。高崎の地に居を構えて以来、ふと時間を持て余した際に立ち寄った思い出が鮮やかに蘇ります。

今日はその最後のページの一つをめくるような気持ちで劇場に足を運びました。

懺悔室という舞台の奥深さ

岸辺露伴は動かない 懺悔室』は、シリーズの中でも特に人気の高いエピソードの映画化であり、邦画初の全編ヴェネツィアロケという贅沢な作品です。物語は、取材旅行でヴェネツィアを訪れた露伴が、教会内の「懺悔室」で男の過去の告白を聞くところから始まります。その告白は、25年前の恐ろしく、罪深い物語でした。

ちょっとした失敗から始まった日

舞台挨拶の中継があるとのことで、混雑を予想して午前10時前に劇場へ到着し、チケット購入の手続きを行いました。その際、受付で誤って「こうべろはん」と言ってしまい、大変恥ずかしい思いをしました。 普段は「きしべ」と正しく読んでいるつもりだったのですが、どういうわけか口が勝手に違う言葉を発してしまったのです。

さらに、受付の方が優しく聞き流してくれれば良かったのですが、「きしべろはん、ですね」と確認されたため、余計に気まずい状況になってしまいました(笑)。しかし、こうした些細な出来事も、今日の記憶として不思議と温かく心に残っています。
舞台挨拶への期待と緊張、そしてちょっぴり恥ずかしいハプニングが、特別な一日を彩ってくれたように感じています。

落ち着いた中継スタイルも悪くない

最終的に観客は15名ほどだったでしょうか。混雑はなく、ゆったりと鑑賞できました。中継という形式も、これはこれで悪くありませんね。

中継元には俳優陣が実際にいるため、どうしても距離を感じてしまうのは少し残念ですが、映画館の大スクリーンで見られる臨場感はやはり格別です。今回は前の席の人が気になることもなく、快適に映画の世界に浸ることができました。

舞台挨拶中継でも話題になっていましたが、ヴェネツィアの街並みは本当に美しい。 水の都に流れる空気や光の陰影が、映像全体に品格と神秘性を与えていました。逆にこれを日本で撮ったらどうなるんだろう?と、ふと考えてしまいました。

上映前の思い出と比較して

ふと思い出すのは、過去に109シネマズ高崎で行われた映画『包帯クラブ』の舞台挨拶のことです。石原さとみさん、柳楽優弥さんをはじめとする豪華キャストが登壇され、会場は熱気に包まれました。しかし、その興奮とは裏腹に、私の前の席に座っていた観客のマナーがあまりにも目に余り、今でも鮮明に記憶に残っています。

舞台挨拶中、前の席の方が何度も立ち上がって手を振るため、演者の皆さんが全く見えず、非常に残念な思いをしました。さらに、舞台挨拶が終わって俳優陣がステージを後にすると、その方はまるで何かに追われるかのように、足早に会場を後にされたのです。

人の記憶には、映画そのものだけでなく、その場の雰囲気や周囲の振る舞いも強く刻まれるものなのですね。

映画館という公共の場であるにも関わらず、周囲への配慮を欠いた行動は、他の観客の鑑賞体験を著しく損なう行為です。映画そのものの感動だけでなく、その場の雰囲気や周囲の観客の振る舞いもまた、記憶に深く刻まれるということを、改めて痛感させられました。

心臓が潰れるかと思いました

映画の終盤、女性編集者の口から漏れる
心臓が潰れるかと思いましたよ
という一言。それが、この作品を締めくくる最高の台詞かもしれません。

そして何より、井浦新の演技が本当に秀逸で、実に嫌味な男を見事に演じています。個人的にこの役は彼にしかできないとすら思いました。
観終わった直後、率直に「これはホラーだった」と感じました。物語は静かに進行しながら、じわじわと不穏な気配を滲ませ、観客の心理を揺さぶっていきます。

レオナルドAI

一方で、物語の舞台となったヴェネツィアの風景は美しく、まるで一枚の絵画の中に迷い込んだかのような感覚を覚えました。ヴェネツィア特有の静けさ、朽ちかけた石畳、運河に映る光。そうした景色の中にある"懺悔室"という空間が、物語の持つ重さや深みをより一層引き立てていたと感じます。

原作を知らないからこそ

私は原作漫画をほとんど知りません。ドラマを何本か観たことがある程度です。けれども、それがかえって良かったのかもしれません。強いイメージがない分、映像や演出に対して先入観なく、自然体で物語に没入できた気がします。

思い返せば、昔『宇宙戦艦ヤマト』が実写化されたときも同じようなことを感じたことがあります。アニメを知っている人は「これは違う」と思ってしまうかもしれない。でも、まっさらな状態で観れば、むしろその世界観にすっと入っていける。そんな感覚が、今回の『岸辺露伴』にもありました。

「知らないこと」は、時に「偏りのない目」を持たせてくれる──そんな気づきとともに、今日の映画体験は心の中に静かに沈んでいきました。
109シネマズ高崎で観る最後の映画になるかもしれないということも含めて、今日という一日は、忘れがたい記憶として残ることになりそうです。

さて、映画本編ですが、『天国の日々』のような、心地良すぎて眠気を誘う単調な展開とは異なり、最後まで飽きることなく、物語に没頭することができました。

最後に

本作は、単なるエンタメではなく、人間の罪や欲、後悔や赦しといったテーマが根底に流れています。映像、演出、演技、音楽、どれを取っても一級品。個人的には、近年観た邦画の中でも特に印象に残る作品でした。

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