またひとつ、灯りが消える場所で

第一章:静かに閉じる、親しみの扉

 

またひとつ、灯りが静かに消えていきます。

 

こちらに引っ越してきてからずっと、視力があまり良くなかったこともあって、ときどき通っていたメガネ屋さんが、2025年3月で閉店になりました。

 

それまで「眼鏡って高いもの」という思い込みがあった私にとって、このお店との出会いはちょっとした驚きでした。意外と手頃な価格で、でもしっかりした品質のメガネを作ってくれる場所だったので、気がつけば何度も足を運び、長くお世話になっていました。

 

新しいことが始まる一方で、慣れ親しんだ場所が静かに姿を消していくと、心のどこかにぽっかりと穴があいたような、そんな気持ちになります。 この気持ち、きっと私だけではないと思いたいのですが -それでも、どこか取り残されたような、そんな寂しさがふと胸に残ります。

 

閉店したのは「メガネの板垣」。チェーン展開しているお店なので、完全なお別れというわけではありません。でも、通い慣れた地元の店舗、店員さんとの何気ないやりとり、ガラス越しに見えた季節のうつろい。

そういった“いつもの風景”がなくなるというのは、それだけで日常の景色が少し違って見えてしまうのです。

レオナルドAI

第二章:スクリーンの灯りが消えるとき

 

そして、さらに胸を締めつけるようなニュースがもうひとつ。

 

これまで、気持ちを整理したいとき、季節の節目、なんでもない日にもふらりと訪れていた映画館――109シネマズ高崎が、2025年8月いっぱいで閉館してしまうと知りました。

 

この映画館では、シネコンらしくさまざまなジャンルの映画を上映していて、観たい映画が複数あるときには、一日に二本連続で観るなんて無謀なこともしていました(笑)。ときには、心がざわついたり、イライラしていたり、何となく落ち着かない気分のまま足を運んだこともありましたが、上映が終わる頃には、まるで心の中のもやがスッと晴れるような、そんな経験もたくさんありました。

 

109シネマズは全国に展開しています。けれど、“映画館”という空間は、ただ映画を観る場所ではなく、その人だけの時間と記憶が積み重なった、かけがえのない場所だと思います。あのロビーの匂い、ポップコーンの香り、座席に沈み込んでいく瞬間、暗転するスクリーン -。すべてが私にとって、心のどこかに灯るひとつの「拠りどころ」でした。

 

私にとって、日常の合間にそっと立ち寄れる場所、セカンドプレイスやサードプレイスのような存在が、静かに姿を消していく。それは、日々を支えてくれていた小さな灯りが、ひとつ、またひとつと消えていくような -そんな感覚に近いのかもしれません。