第1章｜春に溶ける哀しみと銃声 ― 『アマチュア』という静かな衝撃
第2章｜「アマチュア」である強さ ― 知性と孤独が交錯する心理戦
主人公は“プロ”ではありません。しかしだからこそ、見えるものがあります。システムの外側にいる者だからこそ見抜ける欺瞞。人としての感情を忘れていない者だからこそ持ち得る、ぶれることのない意思。 「アマチュア」というタイトルは、単なる皮肉ではなく、むしろ逆説的にその強さを象徴しているように感じました。ラミ・マレックは、抑えた表情の中に、怒りや葛藤、決意を織り交ぜ、観る者の心に鋭く訴えかけてきます。 カウンセラーの登場シーンでは、「前を向いて生きるべきだ」という言葉が、かえって人を追い詰めてしまう描写が印象的でした。癒やしを与えるはずの言葉が重荷になる瞬間──それは、社会が“弱さ”に向ける無意識のまなざしにも重なります。この映画は、アクションの裏に、そうした心の機微や孤独を繊細に描き出していると感じました。
第3章｜スクリーンの灯が消えるとき ― 109シネマズ高崎に贈る想い出
『アマチュア』を鑑賞したこの109シネマズ高崎は、2025年8月をもって閉館するとのことです。私が高崎に引っ越してきた頃には、すでにこの劇場はありました。図書館の帰りや気分転換の散歩の途中に、ふらりと立ち寄れる場所。映画館という空間が、日常にそっと寄り添ってくれていたのです。派手な思い出ではありません。ただ、ひとりの時間を味わいたい日に選ぶ“寄り道”として、確かにそこにありました。 今回の鑑賞は、まるで劇場へのはなむけのように感じられ、いつにも増して心に残る映画体験となりました。街の中からまたひとつ、“スクリーンと過ごす静かな時間”が消えていく──その寂しさは、言葉になりません。
🎥おわりに
『アマチュア』は、ただのリベンジ・スリラーではありません。知性と心理戦、そして人間の弱さと強さが交錯する作品でした。 復讐の物語でありながら、その根底には深い孤独と、心を貫く静かな意志が宿っています。知略と感情の狭間で戦う“アマチュア”の姿は、私たち自身にも重なって見えるかもしれません。 知的なサスペンスや人間ドラマが好きな方に、ぜひ劇場で体験していただきたい一本。そして、109シネマズ高崎で映画を観る最後の機会を、大切に味わっていただけたらと思います。
